随想録 Ⅰ


我、人なりや?



今日の予定は何だっけ?
アラームに起こされ、思うのは毎朝の通例ミッション。
カーテンを開けて天気をチェック。ついでに空気の入れ換え。テレビのリモコンを片手に洗面所へ。音声が部屋に響く。
洗顔、歯磨き、寝癖はなし。スキンケアするの忘れませんように。

シャカシャカと音を立てながら歩く。朝ごはんはどうするか、冷蔵庫を見て決めようか。
扉を開けて冷気を浴びる。真っ白な庫内に目が眩む。
とりあえず飲み物、とピッチャーを取る。歯ブラシの何十倍もの重みに腕の筋肉が張る。
食卓に昨日買ったパンも置く。少し温めるつもりが熱くて触れなくなってしまった。冷めるまでに水筒の準備。
昼ごはんはどうしよう。何も食べていないのに、次の食事の準備まで、と思うが朝は戦争、というから。先へ先へと思考を巡らす。

寝間着から仕事着へ。着替えながらあっちへこっちへ。
テレビから今日のニュースと天気予報を聞き取る。傘は必要ないらしい。
程よくなったパンを食む。咀嚼しながら戸締まり確認。食べ歩きはよくない、と注意されることはない。独りだからこその特権。見られていないから自由に、気ままに。
社員証を持つ。くるりと裏返った個人情報欄に書かれた『血統書』の文字。

くだらない。『人』であることの何がいいことなのか。
純粋な種族だから、とランク付けされ。混在種との格差を設け。
何を誇り、何に驕る。『人』というだけで何の取り柄もないのに。

「血や見た目だけで判断していいのでしょうか」

コメンテーターの声に今朝はどうも同感だった。
本当に、心の奥では思いも寄らない感情を持ち合わせていたっておかしくないのに。価値観の違いです、で済ませてはいけないのに。

そろそろ出発の時間、テレビを消さなきゃ。リモコン、どこにやったかな。面倒だから帰ってから探そう。
本体のスイッチで電源を落とし、鍵を持つ。荷物を担ぎ、靴を履く。

さて、外は晴天なり。本日も『人』として振る舞ってこようか。


元ネタ:人間か人外か
おまえはマジで本当に純粋な人間(血統書付き!)

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