悠々閑々
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エースと別れた後、マルコはどうやら探している人物がいるようで、船内の奥へ奥へと入っていった。
ケイが初めての海賊船に心踊り、辺りをキョロキョロと見渡していたら、いつの間にかたどり着いていた先はどうやらキッチンのようだった。
お目当ての人物を見つけたマルコは立ち止まり、その人物に「おう、」と声をかける。
「お、マルコ」
彼は先ほども甲板にいた、サッチだ。
料理の下準備でもしていたのか、その作業を一時中断してこちらに近寄ってきた。
「サッチ、これから宴だ。用意頼むよい」
「あん?…じゃあもしかして!」
ちょうどマルコの背中に隠されて見えなかったのか、サッチはマルコの後ろを覗き込んだ。
そこには小さくて丸っこい頭をしたケイが、ご自慢のアホ毛を揺らしながらいた。
ばち、と目が合うと、照れくさそうに笑っていた。
マルコはすい、とケイが見えるように避ける。
「お〜!さっきの不思議っ子!オヤジにOK貰えたんだな!」
『あ、はい!先程はどうも…』
「そういうわけだからよい、準備よろしくな」
「よっしゃ任せろ〜!爆速で用意してやんよ!」
宴が好きなのか、新しい家族の加入が嬉しいのか。
きっとどちらもだろうが、サッチはやる気満々で準備に取りかかろうとした。
しかし、「あっ、」と何かを思い出したかと思うと、ケイと目線を合わせるように身を屈めた。
「そういや不思議っ子、名前まだ聞いてなかったな。俺ァサッチ、ここの4番隊隊長を任されてる。服見てもらえりゃ分かるかもしんねえが…まァ戦うコックさんだからよ、何か食いてえもんあったら遠慮なく俺に言ってくれよな」
『あ、えと、僕は秋月螢です!よろしくお願いします』
「なんだよよそよそしいな、敬語とかいーから。な?」
そう言うと、彼は気さくな笑顔で手を差し出してきた。
『!う、うん!よ、よろしくサッチ!』
「おうっ、よろしく……って…」
『…?サッチ…?』
ケイはもちろんそれに応えたのだが、握手してから5秒…10秒…経過してもサッチは固まってその手を離そうとしない。
さすがにケイだけでなくマルコもこれはおかしいと思い、2人してサッチを怪訝な顔して見たが、彼は己の手とケイの手を見ながらわなわなと震えている。
何かあったのかと問おうとする前に、サッチは愕然としながらその口を開いた。
「手ェちっさァ…!!マジ?!!えっ、ちっさ…!!!!」
『へ、』
「は…?」
何かと思えば、手の大きさの違いに彼は驚いているようだった。
あまりにただならぬ表情だったので、身構えていた2人もこれには拍子抜けだった。
「えっ、待て待て、何歳なんだお前」
『え?えーと、15歳…』
「15ォ!!??おいマルコ聞いたか?!15歳だってよ!!!!」
「わ、若ェだろうとは思ってたが…お前、まだそんななのかよい」
終始、何を言ってるんだこいつは、といった顔をしていたマルコだったが、さすがに末の弟と自分の年齢差には目を見開いて驚いていた。
それもそのはず、2人はこの船の長男とも言えるほどに古株なのだから。
『え、もしかして…最年少…?』
「ケイが来るまではエースがウチで一番下だったけどなァ、更新しちまったな」
「確かにねい……お前、戦えねーみてェだし、早々に死ぬんじゃねェぞ?若ェなら尚更」
『ヒッ…気をつけます!!』
「そうだなァ…こんなに小せェんだ、知らねェうちに潰されてそうだ」
『怖ッッ!!!!』
あながち冗談とも言えないのが、ケイにとって恐ろしいことであった。
マルコやサッチはまだ"かなり背の高い普通の人間"で済むが、ジョズやビスタ達となってくるとそうもいかなそうである。
この世界の人間は大体が規格外の大きさだ。船の中だけでなく、いつかは敵と対峙する時も来るだろう。
白ひげレベルともなればどうだ。間違って下敷きにでもなれば…。
そこまで考えて、ケイは思考回路を完全に停止した。強制的に。
背筋が凍りついたのは、きっと冷房のせいだと信じたかった。
「ハハ、悪ィ悪ィ!ま、そうならねェように俺たち家族がいるんだ。弟を守るのは俺らの役目…末永くよろしく頼むぜ、ケイ」
『…!うん、ありがとうサッチ!』
この世界に訪れてまだ一時間も経っていないが、既に自分を家族と扱ってくれる優しさに、ケイは胸の奥が温かくなった。
改めて握られた手を、小さいながらも心を込めながら、満面の笑みでぎゅっと握り返した。
その直後、サッチから"ぎゅん"と何とも言えない音が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろう。
用事を済ませた2人がキッチンから出ようとした時、サッチはマルコだけをひっ捕らえ、連れ戻した。
ケイにはちょっと待ってな、と声をかけキッチンの外にいてもらいながら。
「ッオイ!!何すんだよい!!」
突然のことにマルコがキレるのも当然である。
しかし、サッチはそれを気にもせず、マルコの肩を組みながら小声で話し始めた。
その目はどこか遠くを見つめていた。
「…… ケイって小さくて、何かこう…愛おしいな…?」
まさかの兄弟の爆弾発言に、マルコはより怪訝な顔をしながら眉間に皺を寄せた。
「……はァ゙?……お前…まさかそういう趣味が…」
ちょっと離れてくれよい、とあからさまに嫌そうな顔をして組まれた腕をどけるマルコ。
しかし彼がそうするのも頷ける。
一体いきなり何を言っているのだと、きっと100人中98人がそう思うだろう。残りの2人?それはあまり考えないでおこう。
「違ェエ〜〜!!!!何つーのかなあ、こう…小動物?ペット……?俺、ハムスターとか飼ってみたかったんだよなあ…」
マルコが抱いた誤解とその行動に慌てて弁解をするも、時すでに遅し。
彼は冷めきった目__どこか哀れみも含んでいるが__でサッチを見ながら、肩にぽん…と手を置いた。
「……お前が人の道外れた時は、俺が一思いに息の根止めてやるよい…」
いや、彼の目は冷めても哀れんでもいなかった。彼はどこか、…諦めていた。
「やめろ!!そんな目で見んな!!変な意味とかねェから!!!!」
いくらサッチが弁解しようと喚こうが、馬の耳に念仏、糠に釘、暖簾に腕押し……マルコ は「おう」と空返事だけして、キッチンをあとにするのだった。
『サッチどうかしたんですか?』
「ん…、まあ…………お前、アイツに何かされたら俺に相談しろよい……」
『えっ……?それはどういう…?』
__無論、誤解は解けず。
_____
サッチは庇護欲強め。
夢主くんが小動物か何かに見えてます。
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