郷に入っては郷に従え
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「さて…どうするよい、先に服かよい?」
『うおーーー!!!すげえ~~~!!!!おばちゃんこれ何?!』
「うまそーーーー!!!」
ゴンッ、ゴンッ、と二発の鈍い音が響いた。
「……何か、言う事はあるかよい」
『ごめんなさい…』
「これうんめえ」
立派なたんこぶを携えた僕は、仁王立ちして構えるマルコさんを前に頭が上がらなかった。
何故こんな事になったのかといえば、初めて上陸した島にテンションが上がりまくっていた事が原因だ。
特に栄えているわけでもなく寂れているわけでもなく、至って普通の島だが、それでも僕にとって未知なる場所であることには変わりない。
そもそも僕がいた場所と街並みが違いすぎる。
時代が少し前というか、その前に建築様式が違うというか、もはや洋風だし、何もかもが違すぎてドキドキしてしまう。
おばちゃんが構える露店も珍しく感じてしまい、調子に乗ってたらこうだ。
「お前…当初の目的忘れてねえだろうな?」
『はい…もちろんです…はい…ご迷惑おかけします…はい…服屋さん行きましょう…』
「うんめえ」
名残惜しいが店のおばちゃんに別れを告げ、洋服屋らしき場所を探す。
どうやら普通に観光客が訪れたり、船乗りの物資の補給地にも使われたりしているようで、お店は様々あるようだ。
この様子であればすぐ見つかるだろう。
「…ん、ここかよい」
『ほげっ』
いろんなお店をキョロキョロ見渡しながら歩いていたため、前を歩いていたマルコさんが立ち止まった事に気付かず、衝突してしまった。変な声が出るのはもう気にしないでほしい。
広い背中にぶつけた鼻をさすりつつお店の外観を見てみると、確かに服屋らしい看板がぶら下がっており、壁面はガラス張りで中の様子も見えた。服がずらりと並んでいる。
すごく高そうでもなく、ボロっちいってわけでもない普通のお店。大衆的と言えばいいだろうか。
マルコさんがドアノブに手をかけた。
カランカラン、とドアについたベルが甲高く鳴り響く。
「邪魔するよい」
「いらっしゃいませ~!何かお探しでしょうか?」
「コイツに年相応で動きやすそうな服を何着か」
「はい!かしこまりました!」
話が進むのが早い早い。
こちらへどうぞ、なんて店員さんに案内されたらただ呆然と着いていくしかない。
「買ってやるから、好きな服選んでこいよい」
いや彼氏か。
パパか…。
そのお気遣いに『僕実はお金持ってたんですよ』と言えるはずもなく、店員さんにもさあさあと案内され、結局言うタイミングをことごとく逃してしまった。