郷に入っては郷に従え
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案内されたのは、大きな"食堂"と呼ばれる所。
長机がずらりと並んでいる。
ここに座ってろ、と促されたキッチンの見えるカウンターへと腰を落ち着ける。
サッチはそのままキッチンへと入っていった。
少しキッチンを覗いてみると、案外奥へと広く、船員の多さを物語るような大きな鍋が何個も並んでいた。
ずっと奥に、鮮やかな色の鱗を持つ大きな大きな魚"だったもの"の切り身が横たわっているようだが、まあ気のせいだろう。
「なーに見てんだ?」
ふと視界が白いもので遮られ、顔を上げて見ると卵やパンを入れたカゴと、何かの肉塊を持ったサッチが居た。
『んーん、何でも…なにそれ?』
「これか?これは海王類のハムだ。俺が作った」
『すご…』
サッチは慣れた手つきでその肉塊に包丁を入れ、薄く切り落としていく。
その後、熱したフライパンにハムを並べる。ジュウ、と焼ける音が何ともたまらない。
程よく焼けたら皿に移し、続いて片手で器用に卵を割り入れる。
流れるような動作に思わず目を見張る。さすが。
卵の方も、黄身がぷるぷるの絶妙な半熟状態で火を止め、皿に移す。
そこにレタスとトマトを添えれば、スタンダードな朝食のワンプレートが完成する。
調理前にトースターに入れておいたパンも、ちょうど良く焼け終わり、香ばしい匂いを放っている。
「はいよ、召し上がれ」
カウンターから出来上がった皿を、僕の目の前に置いていく。
『ほあ…い、いただきます…!』
はじめにパンを手に取った。熱かった。
なるべくパンとの接する面積が小さくなるよう指先で持ち、一口かじる。
さく、と耳心地の良い音が口内に響く。
おいしい。
サッチお手製だというハムにも、フォークを刺して口に運ぶ。程よい塩味とジューシーさがたまらない。
おいしい。
続けざまに、目玉焼きも食べる。ああ黄身が割れてしまった。
おいしい。
「うまそうに食うなあ」
『~~~~っんまい!!!すごい!!サッチ天才!!おいしい!!!』
「うははは!何でもない朝食をそこまで褒められると照れるな!そんなにうまそうに食ってくれると、作った甲斐があるってもんよ」
『すごくおいしいおいし、んぐっ』
「おっと、ほら水。んな慌てなくても飯は逃げねえよ」
サッチの渡してくれた水を、急いで流し込んだ。
危うく渡来(?)1日でその命を終える所だった。
「おうサッチ、俺にもコーヒーくれよい」
「おうマルコ、しょうがねえな」
『、っはあ…危なかった……あ、マルコさん、…先ほどは、どうも、とんだご迷惑を…』
声のする方に顔を向けてみると、目覚めて一番最初に見た人物。
思い切り叫んでしまって申し訳ない。
気づけば食堂内に人が増えている。
「あ?ああ、気にしてねェよい。まだ初日だ、慣れてねえんだろい」
『マルコさん……』
何だかんだ、優しいところもあるのだ。
ま、俺にも非はあるしねぃ…と小声で呟いていたのは、僕にはよく聞こえなかった。