欣喜雀躍
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すると、反対側に背を向けて座っていたはずのサッチがこちら側に向き直っていて、バチ、と目が合った。
少々前のめりだった為、顔が近い。至近距離はさすがにビビる。
『ヒェッ』
「くぉらマルコ、お前何フラグ立ててんだよ!」
「はァ?何言ってんだよい」
「うるせー!可愛い弟を独り占めしようったってそうはいかねえぞ!!」
「なっ、………お前、かなり酔ってるだろ」
「酔ってなんかねーやい!!!!」
そうは言うが、実際かなり顔が赤い。
そうでなくとも、言動を見るだけで酔いが回っている事が分かった。彼は一体何を言っているんだろう。
『サッチ、落ち着いて…』
「落ち着いてられるか!お前、もー、こんな、こんな可愛い弟が出来たんだぞ?むさ苦しい男所帯にまあ、何とも、可愛いなあ可愛いなあ」
『おああああ』
まるでムツ〇ロウさんのように撫でくり回される。
発言に脈絡がない。やはり彼は酔っている。酒臭い。
親戚のおじさんにでも絡まれている気分である。
「…水でも貰ってきた方が良いかよい…」
そう言ってマルコさんは立ち上がる。
その意見には僕も賛成だ。
「いるか!!なあケイ!!!」
依然撫で回されているまま。
『おああああ』
「お前……いい加減にしろい!!」
見兼ねたマルコさんは、先ほどと同様にサッチの頭に拳を振り下ろした。
「あでっ!」
「ったく…そんな可愛い弟に迷惑かけんのは兄としてどうなんだよい!」
水持ってくるまで頭冷やしてろい、そう言い残して、スタスタと離れていってしまった。
いてー、と頭を抑えるサッチ。撫で回す手が止まったのはありがたかった。
ボサボサに乱れた髪を手ぐしで整えていると、サッチはまた傍らに置いていたジョッキに手をかけ、ぐびぐびと飲み干していた。あーあ。
「ぷはっ!…まー、何だ。すまねェな、つい」
『だ、大丈夫です…』
酒をまた飲んだはずなのに、何だかさっきよりも冷静になってくれた。マルコさんの拳によるものだろうか。
思わず苦笑してしまう。
「何であれ、可愛い弟が増えていくってのは、案外嬉しいんだよな。……いや待て、可愛いのはお前以外居なかったわ」
『ぶふっ』
真面目な顔をして呟くもんだから、思わず噴き出してしまった。
男として可愛いは少し不服だけれど。
「…世間からは厄介者扱いされる俺達でも、オヤジに息子と呼ばれて…更に家族が…兄弟が増えていくってのは、すげー嬉しい事なんだ。ここは、あったけーんだよな、居心地もいいし…」
空になったジョッキを弄びながら、サッチは優しげな顔でポツリポツリと話していく。
「だから、お前も何かワケありなのかも知れねーが…何であれ、ココがお前の帰ってくる場所になったんだぜ。…最初のうちはちょいと慣れないかもしれないが、俺らの事、兄として慕ってくれよな」
そう言い終わると、先ほどとは違って優しくポンポンと頭を撫でてくれた。
僕より遥かに大きいその手は、ほんのりと温かく、僕を見下ろすその目はそれ以上に温かかった。
____ああ、本当にこの船に乗って良かった。
来たばかりの僕を既に家族のように扱ってくれるその愛に、僕は何だか照れくさくて、むず痒くて、俯きながら、うん、と呟いた。
「……全くお前は可愛いなあ!!」
『おああああ!!!』
ガバッ、といきなり抱きつかれてしまった。
さっきまでの穏やかさはどこへ行ったのか。
自分より一回りも二回りも大きいサッチに抱きつかれたら、元々小柄な僕なんて腕にすっぽりと収まってしまう。
おああああ。
「……どうやら、お前は…学習しねえみてえだねぃ………」
「アッ」
『アッ』
依然抱きついているサッチの体の隙間から、声のする方を見てみれば、案の定水の入ったコップを片手に持ったマルコさんが仁王立ちしていた。
そこから先は、想像に難くないだろう。