断じて行えば鬼神も之を避く
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……グラララ、なるほどなァ。帰る場所も人も無えから、うちに置いてほしいってか」
『は、はひ……』
こんにちは、ケイです。
もう服とかビッチョリなんじゃないかって疑うレベルで多量の嫌な汗をかいてます。
生きてる心地がしない。
そんな僕は、かの有名な世界最強の男、エドワード・ニューゲートさんの目の前に居る。
先程甲板で土下座しながら話した内容をもう一度彼に告げ、今はその返事待ちという訳だ。
ここまで1秒が長いのは初めてである。
妙に息苦しく感じて、制服のワイシャツの襟をぐい、と緩める。
オヤジは僕の事を一瞥して、ゆっくり瞬きをしてから答えた。
「グラララ…別に乗る事は構わねェ。だが……こちとら遊びで海賊やってる訳じゃねェ。ただ何となくで乗られちゃ困る……お前には、危険や死と共に生きる覚悟が出来てるか?ハナタレよォ」
その言葉に、僕の体は固まる。
確かに、ただ何となくで乗ろうとしていたかもしれない。
漫画で見ていただけだから分かっていないだけで、実際海賊の船に乗り込むという事は、非常に危険な事である。
いつも、死と隣り合わせ。
気を抜けば、ここで間違いなく最弱な僕は、すぐ死んでしまうかもしれない。いや、すぐ死ぬだろう。
自分の命が惜しいならば、適当な島で降ろしてもらって適当に暮らして、帰る方法を探した方が無難なのではないか?
元々無い頭をフル活用して、僕の口から出た答えは存外異質であり、普通でもあった。
『……僕は弱いし馬鹿だから、海賊として生きていく事が、どれだけ大変か分かっていないと思います。…でも、それでも、僕はこの船が良いと思ったんです。人の出会いは一期一会…。けれど、僕がこの船に落ちて来たのは、きっと何かの縁…だからこそ、僕はこの縁を切りたくないんです。…巨大な危険にも死への恐怖にも、打ち克ってみせます。だから、…お願いします…。僕を、この船に乗せて下さい』
そう言い切ってから、僕は頭を下げた。
本来ならば、もう一度土下座したい気分だ。
ああ、何て舐めた口聞いてしまったんだろう。
こんなもやしみたいな男の言う言葉なんて、一切信用ならないだろう。
自分で言っておいて何だが、具体的にどのようにして打ち克つのか、是非とも聞かせてもらいたいものだ。
それでも僕は、絶対に起こり得なかったであろうこの縁を、みすみすと逃せるほど大人じゃなかったんだ。