千載一遇
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「…まあ、お前が俺らに危害を加えないってのは分かった。お前弱そうだしねぃ」
マルコさんに、じろり、と頭のてっぺんからつま先まで見られ、何だか冷ややかな、かつ同情を含んだような目を向けられた。
間違ってはいないけど、何だろう…心に刺さる。
「それで?お前の住んでる所はどこなんだよい?航路の途中にあれば、乗せていけるかもねぃ」
その言葉を聞いて、僕の体はピシッと固まった。
ご好意は大変ありがたいのだが、はっきり言って僕の生まれた所はこの世界には無い。国さえ無い。
かと言って何も答えないのも失礼かと思い、申し訳なくなりながら、この世界に有りもしない国の名前を口に出した。
『…………日本、です……』
「……?ニホン?……そんな島、あったかよい?知ってる奴、誰か居ねえかよい」
「えーー俺分かんねーなあー」
「俺も分かんねえー」
俺も俺も、とさっきよりは幾分減ったギャラリーが、口々に言う。
まあ、当たり前だ。存在すらしないのだから。
「…悪ィが、ニホンを知ってる奴が居ないみたいでよい……どっか近くの島は無いのかよい?」
日本どころか、近くの島さえ一生かかっても見つからないだろう。
というか帰る気は更々無い。
ならば僕がこの世界で生きていく為にはどうするか?
…この船に落ちてきたのも何かの縁。
ここに居れば、いずれ何か分かるかもしれない。
それに…正直、エースが好きだから離れたくない(本音)
それなら、僕がする事はただ一つ。
僕はその場で、勢いよく、
土下座した。
「うおっ?!い、いきなり何だよい?!」
『あっ、あの!大変厚かましいお願いなのですが……どうか、僕をこの船に乗せて頂けないですか?!』
「………は?!」
『…僕には、(この世界には)帰る場所がありません!親も兄弟も…頼れる人が(この世界には)居ません!それで、その…本っっ当に急だし迷惑で無茶なお願いだと思うんですが……どうかっ…!!!!』
頭が甲板にめり込む程にくっ付けて、必死に頼み込む。
嘘は言っていない。
暫くの間、僕とマルコさんの間には沈黙が(というより勢いの良かった土下座に少し引いてる)、ギャラリーにはどよめきが起こる。
それからハッと我に返ったマルコは、慌ててコホンと咳払いを一つしてから、観念したように口を開いた。
「……あーー……事情はよーーーく分かった…………だが…」
びく、と体が震える。
「入団に関しては、オヤジに聞いてみねえとなあ」
『ン゛ッ』
正直、想定はしていた。
というより当たり前の事だろう。
最後の関門、白ひげ海賊団船長、エドワード・ニューゲート。通称、白ひげ。
別にオヤジに会うのが嫌なわけではない。むしろ会いたい。
では何が問題か?
…はっきり言って、オヤジの前で意識を保っていられる自信がない。
生で見たら圧倒されて、失神する自信しかない。
きっと彼の前では僕なんて蟻と同然なのだろう。
「とりあえず、オヤジにお前の口から話してみろよい。オヤジがOKを出したら、お前は白ひげ海賊団の一員だし、NOだったら近くの島で降ろすだけだ」
『死刑宣告か何かですかね』
「あ?…まあ、とりあえず着いてこい、案内してやるよい」
『ふぁい……』
嗚呼、腰が重い。足取りも重い。気分も重い。
願わくは、せめて意識だけでも保って入られますように。
そんなこんなで鉛のように重い体に鞭をうち、オヤジの居る部屋へと歩みを進めた。