千載一遇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
さて、どのようにしてここに来たのか、来てからどれくらい時間が経ったのかが分かった。
そして、…最後に聞きたかった事は。
『……あの、…僕…これからどうなっちゃうんでしょう………』
「……まあ、捨てるか、…殺すかだろぃ」
マルコが、眠そうな目を一層細めて不敵に笑う。
あまりにも衝撃的過ぎて、一瞬言葉の意味が理解出来なかった。
口の中で、普段そう口に出さないであろう「殺す」という言葉を反復させた。
そうして、数秒の時間が過ぎ、ようやく言葉の意味を理解した僕は、サッと青ざめ、そして、……ツッコんだ。
『マジかよ!!!!!!!』
「おわっ?!いきなり何だよい!」
訳も分からず来ただけなのに、まさかの殺害予告。
こんなにも堂々としかも本人の前で告げるだなんて、普段通り生きていたら到底経験しないだろう。
僕の頭の中はパニックの真っ最中だった。
『えっちょまっ、ぼ、ぼぼぼ僕殺されるんですか!?あ、あの!僕別にオヤジの首を取りに来たわけじゃないというか、いや僕でさえ何でここに来たのか分からないというか、もはや僕が被害者というか、いや別にここに来れたのは嬉しいんですけど正直それはひど「待て待て待て待て!!そんな一気に話されても分かんねえよい!!」…うっ、だ、だって…』
まさか危険と隣り合わせですらなかったただの平凡な人間に、いきなり「殺す(ガチ)」と恐怖を叩きつけられてしまったら、もうパニックになるしかない。
ああ、何故か涙が滲んできた。いやいや、これは涙なんかじゃない、汗である。
「な、…何泣いてんだよい、お前…」
「あーーマルコが少年Aを泣かせたーー!」
「うわーーマルコサイテーだなあーー!」
さすが家族と言うだけある。一人のさりげない失敗を、ここぞとばかりに弄る時の連携に、思わず拍手を送りたくなる。
エースが口火を切り、それにサッチがいち早く乗っかり、騒ぎに乗じてやってきた人達もふざけてマルコを囃し立てる。
「うるせえお前ら!!
…ったく、お前もあんな脅しで泣くなよい!俺らもそこまで非情じゃねえんだ、ただの冗談だよい」
やれやれ、といった風に、ため息をつきながら肩を竦める。
「殺す」のが本気では無い事が分かって、急に体の力が抜けた。
立ち膝をしながら若干前のめりになってた体が、すとんと重力に従って落ちる。
『…よ、良かった………けど……け、結局…僕はどうなるんですか……?捨てられるんですか……』
「…そうだねぃ、……つか、お前は一体何しにここに来たんだよい?オヤジの首を取るわけでもねえ、来て大暴れする殺人狂でもねえ、挙句気絶するわ泣くわで…俺にはお前のしたい事が分からねえよい」
はっきり言ってしまえば、僕自身もよく分かってない。
実際、ここに居る事だって未だ信じ難いのに…一体僕は、何の為にこちらに来たのか。
来れた事は嬉しいが、何の理由あって来れたのかが分からないのは、少々不安に思う。
『あの、…えーと、あのですね。僕は、自分の力でここに来たわけじゃないというか、完全不可抗力というか、………』
「……じゃあ誰かに連れて来られたって事か??…何でまた」
頭の上に?を浮かべながら、うぬぬと唸るエース。
…確かにエースの言う事は、一理あるかもしれない。
僕は、誰かにここに連れて来られたのか。
でも一体誰が?何の為に?
『…その可能性はあるかも……』
「…つまりお前は、訳も分からず誰かに拉致られ、何故だかここに落ちてきたって事か?」
『…そういうこと、だと…』
「何だそれ、意味わかんねーな!」
ぷすーっとサッチに吹き出される。
意味が分かっていないのは、誰よりも何よりも僕自身だと思う。