一期一会…?

夜20時。コンビニでのアルバイトを終えたクーは、次のバイト先である工事現場でアルバイトをしていた。

今日のバイトは2つだけ。今日は工事現場での歩行者誘導をする予定だ。


(そういえば昼間の子、ちゃんと迷わずに行けたのかなぁ)


道案内まで出来れば良かったが、仕事もあるため流石にそこまでは出来ない。青年からも丁重に断られたため、その後どうなったのかは分からなかった。


「こんばんはー。こちらの歩行者用通路へどうぞー」


仕事を終え、帰宅を急ぐ大人たちを誘導する。
自分もいつかこんな風にセカセカと働くのだろうか、と思っていると、ふと、人混みに流されるように歩く一人の人影が目に入った。


「あ……!」


真っ白な髪に鮮やかな紫色の瞳。ーー朝のあの青年に間違いない。

人混みに馴れていないのか、何度も人にぶつかりそうになりながらワタワタと歩く青年は、今度は何かメモのようなものを片手に持っていた。
表情は困惑しており、どのか焦りのようなものも伺える。明らかに道に迷っている様子だ。

クーは近くで警備をしていた担当に一言断りを入れると、急いで青年の元へ向かった。


「大丈夫? 困ってる?」

「あっ……」


驚いたように顔を見上げた青年は、やはり今朝コンビニで会った彼であった。
クーは再会できたことが嬉しくて、にっこり笑って見せた。


「やっぱり君、今日の朝コンビニに居た人! おれ、分かる? あの時レジしてた」

「あっ……、あの時の」

「そう! ……で、そのメモなに? どこか行きたいの?」

「えっ、と……」


躊躇いがちに差し出されたメモは、ホテルの名前が書かれていた。地図を見る限り、この近辺にあるようだ。


「でも、ご迷惑なので、僕一人で……」


申し訳なさそうに俯いた青年に、クーは良いことを思いついた、と言わんばかりに手を叩いた。
大きく息を吸うと、向こうで誘導している先輩に向かって手を振り、合図をする。


「すみませーん! 辻、ちょっと持ち場離れます!」

「えっ!? いえ、大丈夫です! お仕事中ですよね!?」

「あっ、ほら! 青信号! 渡って渡って!」

「う、ぇ、……」


明らかに困惑する青年の制止を押し切り、信号を渡る。
周囲からの視線も気にせず、クーは青年の方へ向き直った。


「大丈夫! 早く行こう!」
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