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好奇心にご用心

「そうだ。クライブもどれか一つ食べてみてよ」

「え゛っ」


主人であるシャルルに仕えているクライブだ。普段であれば、あの盲目的な、崇拝に近い主人への忠誠心から率先して食べていただろう。
しかし、流石のクライブもこのチョコレートは食べたくないのか、表情が明らかに引きつっている。


「……もしかして、食べたくない?」

「そういう、ことは……ないのですが……」


クライブのルシェ耳が下がる。
主人であるシャルルからの依頼を断るわけにはいかない。しかし己の意思としては食べたくはない。しかし、他でもなく主人からのーー。

悶々と悩み、決めかねているクライブにしびれを切らしたのか、シャルルはクライブの両手をそっと握った。


「ね、一個だけ。……お願い?」

「っ……!!」


一瞬で耳まで真っ赤に染めあげたクライブは、フラフラとする足取りでテーブルへ寄ると、際立って怪しい色合いのチョコレートを掴み、口に放った。

数度咀嚼した後、ぴたりと動きを止める。


「う゛っ……」

「クライブ!? ちょっ、大丈夫!?」

「だいじょーーう゛っ……」


そのまま勢いよく地面に倒れこんだクライブにキイチが駆け寄ると、シャルルは気まずそうに苦笑いを浮かべた。


「あぁ、あれはフロワロの花粉入りチョコだから……」

「フロワロ!? ちょっ、何てもの入れてるの!? 死ぬよ!?」

「致死量は入れてないから大丈夫だよ。でも、リカヴァかけないとーークライブ、頭動かすよ」


クライブの頭を自身の膝に置き、テキパキと呪文を唱えて治療を開始する。

まだ辛うじて意識があるのか、クライブはシャルルの膝の上で何故か幸せそうに笑っていた。


「シャルの膝の上で死ねるとは……」

「怖っ!! ねぇキミ 死にかけてるけど!?」

「これもまた本望……」

「いいの!? ねぇいいの!? 考えなおして!?」
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