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一期一会…?

一期一会…?





不思議なこともあるものだ。
全てのアルバイトを終え、自転車を漕ぎながら帰路につくクーは、ふと空を見上げた。





「いらっしゃいませー」

いつものようにコンビニに入ってきた客に挨拶をする。
一日のうちでも利用客の多い、朝の通勤ラッシュ帯を終え、店内は台風が過ぎた後のように落ち着いていた。

品出しするものも無い。客も少ない。
特にやることのないクーは、ふと、レジ前であたふたしている一人の客に目がついた。

年齢はクーと同じくらいだろうか。雪のように真っ白な髪に、鮮やかな紫色の瞳。顔立ちも比較的整っており、なかなかの美青年だ。
しかし、東京でも珍しい髪色。もしかすると外国の人かもしれない。


(何か探し物かな?困ってるのかな?)


クーは出来るだけ優しく、青年に声をかけた。


「お待ちでしたらこちらのレジへどうぞ」


驚いたように顔を上げた青年は、クーと目が合うと、再び俯き、手に持っていた品物をレジカウンターに並べだした。


「あっ、あの、携帯電話の、充電器を、ですね。買いたくてですね」

「充電器? お客様のお使いの携帯のメーカーはどちらですか?」

「メーカー? えっと、その、……スマホとかやなくて、ですね」


これなんですけど、と差し出された携帯は、黒を基調とした、いわゆるガラパゴスケータイだった。
今はスマートフォンが主流の時代。ガラパゴスケータイを見たのも久しぶりで、クーは驚いて目を見開いた。


「すっげー! ガラケーじゃん!」

「がらけ?」

「黒色かっけー! ……っと、充電器だよね! じゃなかった。ですよね! うーん……今はスマホのやつばっかだし……あるかなぁ」


クーはレジに札を立てると、充電器の置いてある棚に手を伸ばした。
小さなコンビニではスペースも限られている為、必ずしも何でもあるとは限らない。

しばらく物色するが、それらしきものは見当たらない。

クーは申し訳なさそうに青年に向き直った。


「ごめん……。それっぽいのはうちには無さそう。ーーあ、近くに電化製品のお店があるから、そっちで聞いてみてよ。ほんとすぐ近くだから。方向音痴のおれでも迷わず行ける距離!」


お店のある方向を指差して見せると、青年は口元に手を当てて。


「ふふっ。……すみません。ありがとうございます」


可笑しい、と笑った。
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