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いつもの仕返しに

「あいたっ」
「……間抜け面ァ」

ジュンコは咄嗟に自身のおでこを押さえる。
目を開けると、してやったり、と言わんばかりに笑うアザミと目が合った。

「もう! 何なんですかっ! 痛いです! でもその笑顔も素敵です!」
「きめェ」
「ありがとうございます!」
「褒めてねェよ、ばぁか」
「あ、またバカって言った! バカって言う方がおバカさんなんですよ……って、あれ、もう行っちゃうんですか? お見舞いのぱんつは?」
「今からいつもの検査があるからな」
「お見舞いのぱんつは?」
「その辺から盗ってこい」

あくびを噛み殺し、ゆったりと踵を返すアザミの後ろ姿を見送りながら、ジュンコはふと表情を曇らせる。

(……寂しい)

アザミが居なくなるのが寂しい。また病室で一人になってしまう。

ドラゴンが襲来してからというもの、一人でいることは慣れているはずなのに。
体調を崩してしまった時に、人によっては妙に物悲しさを感じることがあると聞いたことはあったが、この感覚がそうなのだろうか。

(寂しい、けど。会えないわけじゃないわけですし)

せめてアザミを見送るまでは笑顔でいようと、笑顔を作りかけた時、病室から出る直前にアザミが振り返った。

とんとん、と人差し指で自身の頬を叩く仕草。
不思議に思いながらも、つられて自身の頬を触ったジュンコは、熟れたリンゴのように紅潮した。

「……してやられました」
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