いつもの仕返しに
「……これ、どうしたんだ」
「えっ」
ぴと、とアザミの細く白い手が、ジュンコの頬に手を当てられる。
触れられた頬には、治療過程で皮膚が突っ張り、ミミズ腫れした痕があった。
「これ、ですか? ちょっと深く切れちゃったみたいですね。皮膚が突っ張っちゃってて、今の医療体制だと傷跡を失くすまでの処置は難しいそうです。まぁもう少し平和になれば治療出来るでしょうし、今は名誉の負傷ということで!……というか、アザミ先輩指も細いんですね。病人っぽさ増してますよ。ご飯食べてます?」
ぺらぺらと口を動かすジュンコに気を留めることなく、アザミは傷痕をなぞるように指先を這わせた。
「へっ、あ、ちょっと……っ」
「動くな」
目元を隠すように伸ばされた髪から覗く鋭い眼光に、ジュンコは身を硬らせた。
刹那、アザミの指先が淡く光ると、頬にほんのりと温かい感覚が走りだす。例えるならば太陽の光のような、優しい温かさに、心までほかほかとしてくる。
初めて感じる体感に、ジュンコは、ほう、と息を吐いて目を閉じた。
なんとなくだが、全身の痛みも和らいでいるような気もする。先程までズキズキと痛みをあげていた腹部も、どこか違和感を感じていた頭部も、不思議と痛みを感じない。
まるで夢の中に居るようだ。
ふわふわと意識を飛ばしかけていると、急におでこに痛みが走った。