いつもの仕返しに
「あはは……。情けない……」
ジュンコは、力強く自身の身体を抱きしめた。
あのときの光景が何度も脳裏に浮かんで離れない。身体の震えが止まらない。
仲間は、あんなものと毎日戦っているのか。
「私も、13班なのに……」
13班なのに、何も出来なかった。
ハッキングの能力を買われて入団したムラクモ機関の、特に最前列で戦っている13班の一員なのに。ドラゴンを目の前に動けなくなるなんて。
視界が涙で歪む。ーーしかし涙を零すことは絶対にしたくない。
ジュンコは袖口で涙を拭うと、自分を鼓舞するようにガッツポーズをとった。
「よし! あとは慣れです! 頑張らなきゃ! 景気付けにとっておきのぱんつを……」
ジュンコはベッド脇にある棚へと手を伸ばす。班員のロザリーに頼んで持ってきてもらった、ぱんつ保管用の箱。たしかここの戸棚に入れてもらっていたはずだ。
痛む肋骨を押さえながらも手を伸ばした矢先、とんとん、と控えめに扉を叩く音がした。
「はい? どうぞー」
お見舞いだろうか。ジュンコは戸棚に伸ばしかけていた手を止め、扉の方を向いた。
控えめに開けられる扉の向こうから見えた、見慣れた姿に、ジュンコはぱっと笑顔を咲かせた。
「アザミ先輩! お見舞いに来てくれたんですね! ぱんつください!」
「やらん」
「ぎゃんっ」
来客者であるアザミは、普段と変わらないジュンコの姿を見て、ふっと表情を緩めた。
「元気そうだな」
「ええ。これでもムラクモですからね。致命傷は受けましたが回復は早いみたいです。さすが私!」
ぐっ、と親指を立ててみせる。ところどころに巻かれた包帯は痛々しいが、どこも順調に回復しているらしい。
日に日に痛みが引いていることを伝えると、ふと、アザミが真剣な眼差しを向けてきた。
ジュンコはとっさにはだけかけた胸元を隠した。
「いやん! 今私の胸見ました? アザミ先輩なら良いですけど……」
わざとらしく演技をしながら、じっとアザミの様子を伺う。
いつものように小突いてくるのを見越し、ジュンコは軽く目を閉じた。