「いっ…つ…
さすが…すごいパンチだぜ…」
頬を押さえたまま降りる階段。
口の中に充満した鉄の味。
激しい痛みを訴える右の肩。

「おはよう、涼介。
今日も足まわりを中心に試していこうと思ってるんだ。
ん？どうした！？」
白い車体の奥から出てきた人影。
驚いた表情。

「悪い…
今日はもう…帰る。」
「えっ？」
呟いた涼介。
呆然としている史浩。

「何も聞かないでくれ…」
「あ…うん。」
小さく頷いた真剣な顔。
黙ったまま乗り込むＦＣ。

吼えた直後に走り出した車体。

残された史浩。



あの顔…

殴られたのか？


誰に？

社長？


いや…

貴之だな…


しかし殴られるなんて

いったい何をしたんだ？


まさか


あやかちゃんに何かしたのか？


だとしたら

あの程度じゃ済まないか…


うーん？


ぐるぐると回る思考。
首をひねる史浩。

しばらくして降りてきた帝王。


「涼介は！？」
「か…帰ったよ。」
「そうか…」
舌打ちしながら呟いた貴之。
全身から放出される怒り。
圧倒される史浩。

「もうあいつは出入り禁止だ！
来ても入れるなよっ！」
ガレージに響いた怒鳴り声。