「なんだよ…やけに細けぇな…」
タバコをくわえて呟いた文太。

２台のノーズを見下ろしては首を振る涼介。
指示通り少し前に出るハチロク。
顔を上げて力強く頷いた切れ長の瞳。

「行こう、たっくん。」
囁いた女神。
見つめ合う２人。
微笑んで頷く拓海。
大きく手を掲げた涼介。

「始まるぞっ」
「歴史的瞬間の幕開けだぜ！」
「負けるなっハチロク！」
「女神にかなうわけねぇだろっ」
「わかんねえぞ！」
一斉に騒ぎ出すギャラリー。

「５、４、３、２、１
行ってこいっ！」
涼介が手を振り下ろした途端
爆音を響かせ駆け出す２台。
予想通りの立ち上がりで一歩前に出る赤。

「おっしゃあっ」
思わず拳を握る武田。

「ふん…あいつはこれからだ。」
紫煙を吐きながら薄く笑った文太。

「どうだ？見えたか？」
『はいっもうすぐだと思います！』
涼介のケータイに繋がれたスピーカーから響く声。
要所要所に配置されたレッドサンズメンバーからの実況。
静まるギャラリー。
耳を澄ませる父親２人。

『あっ来ましたっ
うわっ
うわわっマジかよっ』
「どうした？」
『あっあっありえねぇっ
こんなこと出来るのはっ
うわぁっうっそだろっ！！』