「熱は何度だ？」
「３８度５分。
それに頭が痛いって…」
大きく息をしながらベッドに座った女神。
聴診器を手にした父。
不安げな表情であやかの手を握る涼介。

「あやかちゃん…
背中もいいかな？」
「うん…」
「ただの風邪？
でも首に痛みを伴う腫れがある…
これは？」
「涼介！
心配なのは分かるが少し静かにしろっ」
「すっすいません。」
久しぶりに怒鳴られた息子。
聴診器をポケットにしまい
細い首を撫でる大きな手。

「リンパ腺の腫れはないね。
痛いって言うのは…あぁ、ここか。」
痛みに歪む表情。
ますます不安そうな涼介。

「涼介、ここもリンパ腺だぞ。
こりゃあ風邪だな。」
「あ…」
「私の部屋に薬があるから…
取りに来なさい。」
「…はい。」
大きく吐いた安堵のため息。
苦笑する父。

「あやかが熱だしたって！？」
突然、開いたドア。
飛び込んできた弟。

「ノックぐらいしろ！」
「うわっオヤジ！
何してんだよっ
当直明けじゃねぇの？」
「あやかちゃんを診てくれって
涼介に叩き起こされたんだ。
将来有望な医者の卵も
恋人の診断には自信がないらしい。」
ちらりと長男を見る父。
赤い顔で俯く涼介。