「おはよーさん。」
「おはよう。
早いな、啓介。」
「あー…うん。
横浜いくんだ。
ワタルが…明日に合わせてＦＤいじらせろっつーから…」
寝癖でぼさぼさの頭。
まだ寝ぼけまなこな啓介。
銀のトレイに皿を並べている兄。

「あやか…
まだ寝てんの？」
「あぁ…
しばらく会えなかったからな。」
「兄貴も大変だなぁ…」
呟きながら大あくび。
呆れ顔で微笑む涼介。

「午後には大学に戻る。」
「ふぅん、じゃあ
横浜に帰るように言っとけば？
俺もいるし…」
「あぁ、そうしよう。」
デニッシュを二切れ。
アイスカプチーノにはガムシロップをたっぷり。
ガラスの皿に盛られたカットフルーツ。
慣れた手つきで並べるトレイ。

「あ～ダメだ。
シャワー浴びてこよ～」
ボリボリと頭を掻きながらキッチンを後にする啓介。
入れ替わりに現れた家政婦。

「涼介様！
申し訳ありませんっ
私がやりますっ」
「いや、もう完了だ。」
「あっあやか様の朝食ですか？
それならこれも…
甘い物がお好きだとおっしゃってらしたので
今朝作ったんです！
特製ワインゼリーです。」
笑顔で差し出した小さなグラス。
透き通る中身。
つやつや輝くマスカット。