「こ…殺されるかと思ったぜ…」
膝に手をつき大きく息を吐いた武王の社長。

額に手を当て大きく頷いた史浩。

「すいません。
俺のせいで…」
「いや、君のせいじゃないよ。」
「元はと言えばあやかのせいだ。
気にするな。」
顔を上げた武田。

俯く涼介。

「とりあえず…
貴之が言ってたように
ＦＣに乗るなら知っておかなきゃならない事が色々あるんだ。」
「あ…慣らし…ですか？」
「松苗のじじいは知識のカケラもねぇからな。
見た目とインスピレーションで買い込んでは並べとく…
あのじじいＺもＦＤも持ってんだぜ！？
走らせねぇなら売ってくれってんだよなぁ！」
ちらりと覗く車屋の本能。

忌々しげに舌打ちをして再び吐き出すため息。

「それで…慣らしってなんですか？」
「一定期間 回転数を抑えるんだ。
でないと変なクセがついちゃう場合があって…」
「あっ
来る時にだいぶ回したんで…
だから排気が臭いのかな。」
「いや…
排気で分かるのは貴之くらいじゃないかな？
ＦＣの事ならなんでも知ってるからね。」
「そうなんですか…」
呟いて見下ろす白。

初めての愛車。

女神が愛した車。

確かに膨らんでいく愛着。