「宿題みて！
数学なんだよ～」
「あぁ。」
事務所から顔を出したあやか。

見上げる貴之。

「あやか。」
呟いた低い声。

「なぁに？」
「ちょっと…下りて来いよ。」
「え～っやだよ！
クサいもんっ」
動揺を隠すように背けた顔。

「いいから来い。」
まっすぐに女神を見つめる瞳。

その後ろで明らかに動揺している武田。


あの小心者！

バレバレじゃねぇかよっボケ！


小さく舌打ち。

「あやか！」
「分かりました！」
唇をとがらせて階段を下りる女神。

じっと見つめる帝王。

「なぁに？」
閉まったシャッターの前に立つ小さな体。

冷静なフリをして見上げる茶色の瞳。

激しくなる動悸。

「確かに…くせぇんだよ。」
「うん。
だからやだって言ったじゃん！」
「こんな排気を出す車はココにはない。」
ぎくりとして口をつぐんだあやか。

ちらりとシャッターに目をやる貴之。

「なんで３番が閉まってるんだ？」
「知らないよ。そんなの…」
呟いて俯いた薄茶の髪。

「武田。」
「なっなんだ？」
不意に名前を呼ばれて飛び上がる武王の社長。

あやかを見つめたままの貴之。

揺れる薄茶の瞳。