「なにこれ！？
ユキじゃないじゃんっ」
「ユキ？」
「貴之のＦＣの愛称だよ。」
首を傾げた涼介に
そっと囁く史浩。

「新規の客。」
「白いＦＣなんて
たかにーが見たらどうなるか…
知らないよ～？」
「バカっお前がっぐぉ」
武田が叫んだ瞬間
綺麗に決まったローキック。

うずくまる武王の社長。

「バカにバカ呼ばわりされたくない。
燃やすぞ。」
「まぁまぁあやかちゃん…
彼がオーナーだよ。」
笑顔でなだめながら涼介を振り返る史浩。

かすかな期待を胸に下げた頭。


「どうも…
高橋涼介です。」
「たかはし…りょうすけ…
ん～？聞いたことある気がする…」
唇に添えられた細い指。


もしかして

覚えててくれたのか？


じっと涼介を見据える薄茶の瞳。

一層 激しく暴れ出す心臓。


「あ～っ
ベンツの人！」
「ははっ
そうですね。
ベンツでした。」
ぱぁっと笑った２人。
頷く涼介。

「ベンツ？」
「足がなかったので
父の車を借りたんです。」
「高崎って事は…秋名か？」
「いえ…赤城です。」
「そっか！
赤城で会ったんだよね。」
微笑むあやか。

穏やかな笑顔で頷く涼介。

２人を交互に見る武田。