「ん？なんだこの音…」
不意に耳に届いた音。
聞き覚えのあるエキゾースト。
ふと手を止めた黒髪。

「どうした？」
「客みたいです。」
「客？」
近付いて来た気配。
耳をすませる史浩。

「なんなんだ…」
「ワタル？」
「ちょっと見て来ますっ」
駆け出したワタル。
呟く独り言。

「こんな音で武王に来るなんて…
アホか？」
抜け出したガレージ。
目の前に止まった白。

「しかも白かよっ
バカじゃねーの！？」
思わず叫んだ声。
見慣れた形。


誰だよっ

白は原田さんの色だって知らねぇのか？

しかもこんなだっせぇＦＣで…

素人が武王になんか来るんじゃねぇよ！


胸に育った誇り。
関東一のショップ。

降り立つ長身の男。


武王では認められない２色のボディカラー。

白とウィンズレッド。

言わずと知れた帝王と女神。


「あ…すいません。
武王ってここですか？」
穏やかに問いかけた青年。

「あん？
ウチは会員制だ。
登録してから作業するまで１年は待つぜ。」
冷たく言い放つワタル。

「あっ知ってます。
車を買ったら来るように言われたので…」
ひるまず言い返す声。
ますます不機嫌そうな黒髪。