「史浩。」

「ん？どうした？」

「わりぃ。
あっちの駐車場にとまってるベンツの男…
調べといてくれ。」

タバコを踏みつぶしながら呟いた貴之。

「ベンツ？
こんな日にベンツで来てるのか？
井筒さんじゃ」

「あいつじゃねーよ。
若かった…
俺と同じくらいかもしんねぇ。」

ギラリと冷たく光った茶色の瞳。

おとなしく頷く史浩。

「分かった。
じゃあ見てくる。」

「あぁ…」

「たかにーっ
あたしたちも走っていい～？」

女神の声。

「あやかは最後だけだぞ！
わりぃ、頼んだ。」

「あぁ。」

ニヤリと笑って駆け出す帝王。

「分かってるよーっ
レッドウィンズのみんなだよっ」

「あぁそんならいい。
好きに走れ。」

「走っていいって！
行ってらっしゃーい！」

爆音を上げて滑り出す車。

笑顔で手を振るあやか。

寄り添うように後ろに立つ貴之。


本当に心配性だな。

あやかちゃんがかわいくて仕方ないんだろうな…


２人を横目で見ながら歩き出す史浩。

見えて来た駐車場。


確かに…ベンツだ。

しかもこのサイズ…

珍しいな。


大きな車の傍らに立つ人影。

長身の美少年。