「１人でウロウロするなって言ってんだろ。」


イラついた声とともに吐き出される紫煙。


またしても息を飲む涼介。



少し長い前髪の隙間から覗く

ギラギラした茶色の瞳。


がっちりした肩。


タバコを口へ運ぶ長い指。


端正な顔に浮かぶ不愉快そうな表情。


「ごめーんっ」


駆け寄るあやか。


その頬を撫でる貴之。


絵画から抜け出たような２人。



女神と帝王…


気味悪いくらい


似合ってる。


入り込む余地なんて


あるわけないか…



見とれたまま吐き出すため息。


「アレ誰？」


自分を貫く冷たい視線。

思わず目をそらした涼介。


「はじめちゃんと間違えちゃった。」


屈託なく笑うあやか。

タバコを噛む貴之。


「何してた？」

「ん？何も？
ちょっとお話しただけだよ。」

「ふぅん…行くぞ。」


再び涼介を一瞥して背を向けた帝王。


「待ってよぅっ」


早足でついていく女神。

こっそり振り返って振られる小さな手。


小さく手を振る涼介。


横目でそれを見ていた茶色の瞳。



遠ざかる２人。


見つめたまま立ち尽くす涼介。