「大輝…」
優しい穏やかな声。
顔を上げた大輝。

「あやかも…おまえの事
嫌いじゃねぇと思うぞ。」
「えっ」
「会ったりするとな…
いつも聞かれるよ。
大輝は元気にしてるのかって…」
「あっ…」
落ちた雫。
泣き出した大輝。

「あやかが元気になったら
東堂さんとこで会うようにするから…
今日は帰れ。な？」
震える肩に置かれた手。
しゃくりながら頷く黒髪。

「あのっ俺は？」
「ん？」
「あやかちゃん…
俺のことは聞きませんか？」
真っ赤になっている酒井。
思わず笑った智幸。

「酒井は聞かれねぇなぁ！
俺が酒井も元気だぞって言うと
あっそ！って言うんだ。」
「そ…そうですか…」
がっくりとうなだれる背中。

「ほれ、もう帰るぞ。」
２人を促す智幸。
名残惜しそうに歩き出す３人。

「トモさんっ」
廊下の奥からやって来る長身の男。

「おっワタル！
早いな。」
「トモさんこそ早いですね！
あやかは…」
「まだ寝てた。
だからもう帰る。」
「そうですか。」
「赤城の白い彗星だったんだな。
りょうすけさんって…」
「あっはい。」
ちらりと大輝を見て頷くワタル。
鼻をすする大輝。
黙ったままの酒井。