「今は検査中です。」
「なんの検査をしていて
今どんな状態なのか教えて下さい。
自分は医学生です。」
「えっ？」
「お願いします。」
礼儀正しく下げられる頭。
あっけにとられる看護師。
じっと見守るワタル。


この人にも

こんな情熱的な一面があるんだ。


なんか…安心した。


カルテを見せてもらっている涼介。
次々と繰り出される質問におどおどと答える看護師。

「ストレスで弱った胃に逆効果の薬で潰瘍になったか…
状態からすると寝ているだけだな。
もう一般病棟に？」
「はいっさっき移しました。」
まるで看護師と医者だ…
こっそり笑うワタル。

「じゃあ病室に…」
「一般病棟はこの時間、患者さん以外立ち入り禁止です。」
ちらりと看護師を見る切れ長の瞳。
息をのんだ看護師。

「連絡…まだ来てないのか？」
「なんの連絡ですか？」
「あっいたいたっ
高橋涼介さんですね？」
受付から出てきたスーツ姿の男。
黙ったまま頷く涼介。

「お父様から連絡をいただきました。
婚約者の方が緊急入院なさったらしいですね。」
「こっ婚約者！？」
素っ頓狂な声を上げたワタル。

「お静かに願います。」
冷たく言い放つ看護師。