「あっ！
でも走ってる時にビリビリいってたの！
どこか破けてない！？」
ストンと落ちたコート。
目の前に広がる素肌。
真っ赤になった頬。

「あ…」
「あやかっそのっ背中！」
「うん。
やっぱり脱ぐと寒い！」
ざっくりと開いたサテン。
惜し気もなく晒される背中。
縮こまってにっこり笑う女神。
艶かしい曲線に言葉を失う啓介。
思わず立ち上がりコートを拾う兄。

「涼介さん？」
「素敵なドレスだけど…
ちょっと露出度が高過ぎるね。」
「あ…
女子少ないから派手にしろって
政子さんがシロに頼んでて…」
「その…紐…すげぇな！」
「例の紐って言うらしいよ。
腕があんまり動かないの。」
苦笑し寄り添う涼介。
やっと口を開いた弟。
膨らみを強調する金。

「くっそエロい…」
「えっそうなの！？」
「うん…刺激的だね。」
口に手をやりそらす野性的な瞳。
胸の谷間を隠すフレンチネイル。
ほのかに上気した顔の白い彗星。

「ごめんなさい…あたし…」
「謝らなくていい。
すごく綺麗だ。」
耳に優しく囁く甘い声。
恥ずかしそうに俯くあやか。
細い肩にかけたコート。

「俺じゃま？」
「あやかさま！
お持ちしましたっ」
ノックの後に聞こえた元気な声。

「あっよしえちゃんだ！
はやーいっ」
「支度は終わっていたので…
お熱いので気を付けてください。」
ドアを開けた女神。
広がる香ばしい香り。

「いいにおーい！」
「そちらに置いてよろしいですか？」
「あぁ、すまない。」
大きな銀のトレイに乗せられたごちそう。
にっこりと笑った薄茶の瞳。

「よしえちゃん！
涼介さんの手、子供に噛まれちゃったんだって！
でも大したことないんだって！」
「そうだったんですか！？」
「心配かけてすまなかった。
噛まれたなんて言いづらくて…」
「いえ！
大事なくて何よりです。
あやかさまのお飲み物はこちらに…」
「わぁ！ありがとう！
ロイヤルミルクティーだぁ」
更に笑顔のあやか。
満足げなよしえ。