「ごはんは？」
「まだ食べてないよ。」
「もー出来てたぞ。」
「じゃああたしが食べさせてあげる！」
「えっ？」
張り切って笑うあやか。
揃って驚いた兄弟。

「右手がそれじゃ食べにくいでしょ？
よしえちゃんに頼んで部屋で食べるようにしてもらおう！」
「えっ？」
「あやかは食べたの？」
「あたしは食べましたー
オッサンたちとながーいテーブルでね！」
「オッサンたち？」
「よしえちゃーんっ」
元気に部屋を飛び出す細い体。
呆気に取られたままの啓介。
ソファに座り直した涼介。

「あやか…
大事なパーティーほっぽりだして大丈夫なのか？」
「大丈夫ではないだろうな…
武田さんから連絡が来てる。」
「えっ！なんて！？」
「戻るように言ってくれだと。
無理じゃなければ一緒に来てもかまわないと言われてもな…」
手にしたケータイ。
続々と届くメッセージ。

「え！？行くのか！？」
「この手じゃ着替えるのも難しい。
フォーマルだぞ？」
「そっか…
あやかもヒラヒラした服着てるもんなー
コート脱いだらどんななんだ？」
「さぁな…
友達にスタイリストがいて頼んだと言ってたが…」
「スタイリストまでいんのかよ！
顔ひろいなーあやかは」
「涼介さーん
今日は山形牛のステーキだって！
重たいからよしえちゃんが持ってきてくれるってー」
小さなノックの後に現れた女神。
ふわりと床に落ちるシフォンの裾。

「あやか…
裾…大丈夫？」
「えっ？あぁ！
靴に合わせてあるからスリッパだと長いの。
踏んじゃいそう…」
足元に目をやる切れ長の瞳。
キラキラ光る爪がつまむ赤。

「すげードレスだなー」
「ドレスコード指定だからねー」
「中どーなってんの？」
「ワンショルダーだよ。
脱いだらさすがに寒いかもー」
背中を丸めて覗き込む野性的な瞳。
するりとほどいたコートのベルト。
うなじの先に表れた艶やかな肌色。