「なっ！？もう来たのか！
都内からっつったって早すぎじゃね？」
耳に届いた音。
立ち上がった啓介。
急いで向かうガレージ。

「早かったなーあやか。」
「啓介！
涼介さんは？」
「部屋だ。」
静まる紅。
降り立った女神。
キラキラ輝いたヒール。

「あやかがケガさせたって…」
「うん…
とにかく涼介さんに会いたい。」
沈んだ薄茶の瞳。
どくんと揺れた心臓。

「あぁ…行こう。」
「うん。」
たどり着くドア。
見つめ合う２人。

「兄貴？あやか来たぞ？」
「涼介さん大丈夫？」
ノックする手。
不安げな甘い声。
静まり返った廊下。

「兄貴？」
「寝てるのかな？」
「入るぞ？」
ゆっくりと回すノブ。
そっと覗き込むあやか。

「えっ！？
涼介さんっ！！」
「いって！！」
勢いよく開けたドア。
しこたまぶつけた頭。
部屋に飛び込む女神。

「涼介さんっ！！
しっかりしてっ」
「なっ何！？」
額を押さえて部屋を覗く弟。
ソファに倒れている体。
目を閉じている兄。

「なっ！？兄貴っ！！」
「涼介さんっ
涼介さんっ！！」
大きな肩を揺さぶる細い腕。
ぐらぐらと力なく揺れる首。

「う…あ…あやか…？」
うっすらと開いた切れ長の瞳。

「涼介さん！」
「兄貴！」
「なに？…どうした？」
漏れる安堵のため息。
既に潤んだ薄茶の瞳。
視界に入る白い包帯。

「涼介さんっごめんなさい！
手…あたしだよね！
昨日のっ」
ポロポロとこぼれる涙。
声も出せないあやか。

「あやか…」
細い体を支えつつ起き上がる涼介。
薄茶の髪を優しく撫でた長い指。

「大丈夫だよ。あやか…」
「だってっ昨日…」
「違う…
あやかのせいじゃない。」
「昨日って…大黒行ったんだろ？
何があったんだよ…」
ぎゅっと閉じられた瞳。
優しく覗き込む涼介。
思わず漏れた質問。