「あ…帰ってたのか…
って兄貴！？
どうしたんだよっその手！」
リビングに入って来たとたん叫んだ弟。

「研修先でちょっとな…」
言葉を濁した兄。
右手に巻かれた包帯。

「大丈夫なのかよ…」
「大した事はない。」
不安げな啓介。
冷たく言い放つ声。

「でも、なんで」
「俺の不注意だ。」
弟の声を遮り立ち上がった白い彗星。
言葉を失って立ち尽くす弟。

「よしえさん。
後で部屋にコーヒーを…」
「はいっ分かりました！」
キッチンに向かって言う涼介。
慌てて出てきたよしえ。

「なんなんだよ…
こっちは心配してんのによ。」
兄の背中を見送って呟いた声。

「どうなさったんでしょうか？
私にも何も話して下さらないんです…」
心配そうな家政婦。
吐き出すため息。


いつでも冷静な兄貴がケガ？


おかしい…


しかもあの態度。


何かを隠してる？


「ん～
あ！そうだっ
あやかに聞いてみるか！」
ぱっと明るい表情になった啓介。

「あやか様に？
ああ！あやか様なら何かご存じかも知れませんね。」
にっこりと笑ったよしえ。

「ケータイは部屋だから
すぐ電話してくる。」
「はい！
何か分かりましたら…」
「ああ、すぐ知らせる！」
バタバタと後にするリビング。
階段を駆け上がっていくスリッパ。