「ワタルは分かるが
どうして啓介まで…」
「新人が急に来れなくなったの。
彼女が熱だしちゃって…
だからワタルが誘ったんだよ。」
「そうか、それで…」
にっこりと微笑む涼介。
しっかりと握った手。

「でもスドキョーが涼介さんには
内緒にしとけって言ったんだよ！」
「うん、もういいよ。」
とんがったピンク色の唇。
穏やかな笑顔の白い彗星。

「涼介さんもホテルに来る？
温泉あるよ。」
「今夜は少しやる事があるんだ。」
「そうなの？
やっぱり忙しいんだね。」
申し訳なさそうな声。
つとめて明るい女神。

「そう言えば…
啓介は走りに来ないのか…」
「啓介は酔っぱらっててダメだよ～
着いてすぐからみんな飲み始めて大変なのっ」
「飲んでるのか…」
苦笑したあやか。
ぴくりと動いた眉。

「やっぱり行くよ、ホテル。」
「えっ？」
「啓介は酒癖が悪いからな。
迷惑かけてないか心配だ。」
細い肩を抱いた大きな手。
ぱぁっとはじけた笑顔。

「わーいっやったぁ！
貸切露天風呂もあるんだよ～っ」
「貸切露天風呂？
それは楽しみだね…」
「あっ…もぉっ
涼介さんのえっち！」
黒い光を放った切れ長の瞳。
真っ赤になったあやかの頬。

「星空とあやか…綺麗だろうね。
早く見たいな。」
「やだっえっち！
恥ずかしいよっ！」
耳に囁く涼介。
照れる女神。


「チッ
ありゃあ確かにお似合いだぜ…」
倒れたまま呟いたタオルの男。

「京一！気が付いたかっ」
「俺はあきらめねぇからな…
いつか必ずあやかを奪ってやる！」
心配そうにのぞき込む清次。
睨みつける重なり合った影。

「いや…
ぜってぇ無理だろ。」

相棒の囁きは

夜風にさらわれていった。



そして

問題のホテルは

社員一同にえらく気に入られ

武王の保養所となった。



それからは

女神がいろは坂に現れる回数も増え

エンペラーのリーダーは面目を保つ事が出来たと言う。




→あとがきです。