『聞かれて教えるはずないだろ？』
「…何が望みだ。」
かつてない低い声。
堅く握りしめた拳。

『フン。
さすがに飲み込みが早いな。』
「早く言え！」
『いろは坂で俺とバトルしろ！
負けたらあやかは俺のものだ！』
「は？」
突然の宣言。
思わず開いた口。

『分かったのか！？』
「分かったも何も…
あやかが認めると思うのか？」
半ば呆れた涼介。
吐き出すため息。

『どうかな？
あやかは今だって俺の言うことを聞いてるぜ？
ケータイ繋がらねぇだろ。』
「なっ…お前が…」
とても自慢げな声。
動揺した白い彗星。

『フン。
お前らも大したことねぇってことだ。
女神はいつでも俺のものになるぜ？』
「そんなっ…よくそんなデタラメを！」
わなわなと震える左手。
ギリギリと噛んだ奥歯。

『うるせぇな。
貴之ならともかく、お前にあやかは渡さねぇ。
女神は俺が奪ってやる！』
「そんなことはさせないっ！」
罵声に近い声。
足早に歩く涼介。

『ガタガタ言わずに早く来いよ。』
「うるさい！
すぐ行く！待ってろっ」
吐き捨てるように言って畳む携帯。
素早く乗り込んだ白い車体。
即座に吠え出すＦＣ。