リダイヤルから出した番号。
液晶には加藤あやかの文字。


俺が預かった？

京一なんかにどうかされるようなあやかじゃない。


だが…

あの京一があんな下らん冗談を言うとも思えない。


どういうことだ？


聞こえて来たガイダンス。
ハッと見開かれた切れ長の瞳。


通じない…

あやか？


「あやか？涼介だ。
今どこにいる？
これを聞いたらすぐに電話してくれ。」
手早く言って切った電話。
すぐに呼び出す武王の番号。

『もしもし、武王です。』
「政子さん、涼介です。」
呟いたいつもの台詞。
さえぎった政子の声。

『誠に申し訳ありませんが
本日は都合により休ませて頂きます。
御用の方は発信音の後にメッセージを
ファックスの方は送信ボタンを』
反射的に押したボタン。
沈黙する通信手段。


休み？

金曜日なのに…


電話に出ないなんて初めてだ。


動揺しながら再びリダイヤル。
またしても聞こえた無機質な声。


武王に誰もいなくて

携帯が繋がらない…


どういうことなんだ？


まさか…

本当なのか？


再びリダイヤルから電話。
すぐに出た忌々しい声。

『なんだ？涼介か…
どうした？』
「あやかに何をした？
今どこにいる？」
冷静な冷たい声。

『俺はいろは坂だ。』
「お前の事は聞いてない。
あやかの居場所だ！」
つい出た大きな声に自分で驚いた涼介。
かすかに聞こえた鼻で笑った音。