「なぁ…本気か？それ…」
「俺は冗談は嫌いだ！」
「知ってっけどよ…」
「貴之にならまだしも…
涼介にあやかは渡さん！」
ギロリと睨む鋭い瞳。
肩をすくめる相方。

「うまく行くのか？」
「あぁ、自信がある。」
ニヤリと笑って手にする携帯。

「あやかが俺たちの言うこときくか？」
「きくわけねぇだろ。」
ビクビクと口にする長髪。
バッサリと言い切るタオルを巻いた男。

「じゃあどうやって…」
「もう手は打ってある。」
「手？」
「涼介は研修でコッチに来てるしな…」
呼び出すメモリ。
高橋涼介の文字。

「本当にココに来るのか？」
「来るしかないさ…
あやかは俺が預かったからな。」
「預かったって…どうやって！？」
目を見開いた清次。
通話ボタンを押す手。

「企業秘密だ。」
耳にあてる携帯。
聞こえた呼び出し音。

『もしもし？』
相変わらずの冷たい声。
フンと鼻で笑った京一。

「俺だ。」
『京一…何の用だ？
こんな時間に。』
「あやかは預かった。」
『は？』
意気揚々と口にした言葉。
不信感を露わにした返事。
ぷちんと弾けた思考回路。

「お前にあやかは渡さない。
あやかは俺がいただく。」
「えっ！？」
意外な話の展開に驚く相方。
ギロリと睨みつける京一。

「貴之にならまだしもお前には…
って切るな！オイッ」
突然に切り替わった無機質な音。
液晶には通話時間２０秒の表示。

「切りやがった…」
「きっ切られたのか！？」
「涼介め…
今ごろあやかに電話してるんだろう。」
「電話されたら…」
焦る清次。
冷静な京一。

「フン。
あやかとは連絡が付かねぇよ。」
「なっなんでそんな…」
「言っただろ？
あやかは俺が預かってる。」
じわりと浮かんだ笑み。
真っ黒な山を照らす月光。