「だまれ！」
「は！？」
突然、響いた罵声。
動きの止まった男。

「一体どんなわけがあんのかと思えば
そんなくだらねー理由だったとはな！」
「うわぁっ」
素早く動いた小さな体。
瞬時に掴むシャツの襟。
大げさにビビるメガネ。

「てめぇに涼介さんの何が分かんだよ！？
モテねぇのはてめぇが悪ぃんだろーが！
そんな理由である事ない事さんざん書きやがったのか！？
あぁ！？」
後ずさる背中。
突き当たる白。
睨み付ける瞳。

「なっなっあなたはっ」
「てめぇに名乗る名前なんかねぇよっ！」
「うぐっ」
締め上げる両手。
苦しそうな表情。

「ちょっと待てっあやか！
死んじまうぞっ」
「うるさいっ
啓介は黙ってて！
こんなアホ殺してやる！
よくも涼介さんをバカにしやがったな！！」
初めて見るブチ切れたあやか。
その迫力に圧倒される啓介。

「うっ…が…」
「おいっマジ死んじまうぞ！」
「チッ
じゃあ紅子にぶら下げて引きずり回すか…」
ぱっと離した手。
どさっと倒れた男。

「がはっ…げほっ…
けいすけって…もしかして…」
「高橋涼介の弟だよ。
Ｄのヒルクライム担当だ。」
冷たく言った啓介。
縮み上がるメガネ。