「もぉームカつく！」
「あやか！気にしないの。」
「やだー！」
「怒ったってしょうがないでしょ？」
夜空に響いた声。
ぷうと膨らんだ頬。
なだめ続けるワタル。

「だってムカつくじゃん！」
「何にそんなキレてんだよ？」
紫煙を吐きながら聞く啓介。
仲良く並んだ信号色の３台。

「嫌がらせだよ！
啓介は知らないの？」
見上げる薄茶の瞳。
熱く宿った怒り。

「嫌がらせ？」
「Ｄのサイトに匿名でイヤな書き込みしたり
走り屋サイトに涼介さんの悪口かいたりっ」
「なんだよそれ！
聞いてねえぞっ」
「ムカつくでしょ！？」
「無視するのが一番だって…」
瞬時に怒りに火がつく弟。
ため息をついた武王の主任。

「それって…兄貴は知ってんのか？」
「うん。知ってるよ。
気にしないでって言われたけどさっ」
「だからそれが一番なんだって…」
「そんなのダメ！
だってどんどんエスカレートしてるよ！？」
キッとワタルを睨むあやか。
少なからず動揺した黒髪。

「エスカレートって？」
口を挟んだ啓介。

「最初はさっ
バカとかアホだけだったけど…
最近はＤがお金を払って八百長してるとか！」
怒りで高潮した頬。
堅く握られた拳。