「ふぅ…」
久しぶりに腰を下ろした自室のソファ。

ついつい思い浮かべる愛しい人。
数日前に弟から聞かされた事実。
やって来た次の恋人。
目の前で交わされた誓い。


『あやかは俺が守ります。』


懐かしい友の声。

女神が一番愛した声。



あやかが…

藤原と…


覚悟はしていたつもりだが

こんなにショックだとは思わなかったな…


何度目か分からない大きなため息。

息をするのもつらいほど締め付けられる胸。



二度と会えないと思ってた。


あのまま一生思い続ける決心をしていた。


また出会えて


結ばれて


確かに幸せな時間だった。


あの記憶があれば


俺は生きて行ける。


あやかの幸せのためなら…


俺は…



不意に響いたノックの音。

「兄貴？いるんだろ？」
「疲れてるんだ。
明日にしろ。」
「ワタルが話したい事があるって…
兄貴が帰ってくんの待ってたんだぜ。」
真剣な声。


ワタルが？

なんだ？


「分かった。入れ…」
ため息混じりに呟く涼介。
ケータイを手に部屋に入って来た弟。

「はい…」
差し出す通信手段。
黙ったままそれを受け取る兄。