「うわっ」
目を見開いた武王の主任。
道をふさいだ黒い車体。

「ちぃっ」
反射的に切るステアリング。
同時に踏んだブレーキ。
響いたスキール音。

「あっ」
漏れたハスキーボイス。
斜めに止まった青。

「予想通りっ」
にっこりと笑ったあやか。

「なんでだ…
俺よりアイツの方が上手いのか？」
「違うよ。」
沈んだ表情の中里。
きっぱり否定した声。

「えっ？」
「テクニックは互角じゃないかなぁ？
違いはズバリ、タイヤです。」
そう言って指さす黒。
きらきらと光る長い爪。

「タイヤ…」
「そうっ
ワタルはまたしても最新のタイヤ！
しかも新品だからね。」
「ちょっと！あやかっ
何してんのーっ？
こんなとこにこんな停め方して…」
出て来た長身の男。
いぶかしげな表情。

「毅とオハナシ！」
「はぁ？」
おどけたあやか。
不機嫌そうなワタル。

「違うだろっ
子供が…そこにいたんだ。
だから…止まった。」
「子供！？」
冷静に話す中里。
また見開いた瞳。

「あ…もしかして
女神の子？」
「あぁ、たぶんな。」
「けっこうギリギリだったよ。」
「そうなの？」
「あぁ、やばかったな。」
順番に話す３人。