「大丈夫か？」
「うん…」
やっと離れた２人。
鼻をすすった女神。

「毅…」
「ん？どうした？」
「よく…止まれたね。
ぶつかっちゃうと思ってた。」
見上げる薄茶の瞳。
くらりと痺れた心。

「なんだそりゃ…
俺がそんなに下手だと思ってたのか？」
「うん。
記憶の中の毅だと止まれない気がしてた。」
「記憶の中ぁ？」
「うん…
少し当たるって覚悟してたの。」
小さく笑ったあやか。
髪を撫で続ける大きな手。

「もしかして…
紅子であの子供を守ろうとしたのか？」
「うん…あの距離なら
Ｒも止められたと思う。」
呟くような甘い声。
目を見開いた中里。


あの一瞬で

俺の止まり方から

子供との距離まで計算してたのかよ…


恐ろしいぜ。


さすが

女神だな。


不意に聞こえた音。
慌てて離れる体。

「誰だ？」
「３４…ワタルだっ」
振り返る２人。
近付く爆音。

「アイツは止まれるのか？」
「うん。
ワタルは止まれる。
毅のＲの斜め後ろあたりかなぁ？」
さらりと言い切った女神。
コーナーを見つめる２人。

「来た！」
「いい音だな…やっぱり。」
現れた青。
響くスキール音。