「高橋くん…今日も泊まりかね？」
「はい。
まだ気になる事があるので…」
「研究熱心なのは良いことだが少しは休息も必要だよ。
ここのところ連日泊まり込みらしいじゃないか。」
いつもの大学の研究室。
帰り支度を済ませた助教授。

「大丈夫です。
医者の不養生なんて事にはなりませんから…」
社交辞令的な笑顔を向ける涼介。

「君のことだから心配はしていないがね…
無理は禁物だぞ。
お父さんにもよろしく伝えてくれ。
私は先に失礼するよ。」
「はい、分かりました。
お疲れ様です。」
部屋を出ていく背中を見送って
大きく吐き出すため息。
ぼんやりと眺めるディスプレイ。


もう…

何日目だ？

初めてだな…

こんなに家に帰らないのは…


家に帰れば思い出す姿。

こみ上げる吐き気。

ぐちゃぐちゃな心。

認めたくない事実。


嫉妬？

それとも怒り？


分からない…


自分の中に

こんな感情があったとはな…


椅子にもたれて見上げる天井。
もう一度吐き出すため息。


逃げていてもどうにもならない。

あやかと

話さないと…


俺は


あやかを愛してる…


この気持ちに変わりはない。