「むーっ
もうお前って呼ばないでって言ったのにっ」
「あっ」
ぷぅっと膨れた頬。
びくっとする中里。

「むっかつく！」
ぷいと背を向け歩き出す小さな体。

「どっどこ行くんだっあやか！」
「ジュース買ってくるだけだもんっ」
「俺も行く！」
「１人で平気だもん！」
カツカツと響く靴音。
慌てて後を追う背中。

「相変わらず…女神にゃ弱いな。」
「よう慎吾、久しぶりだな。」
「トム…珍しいな。
お前が横浜を出るなんて。」
右手を上げたトム。
驚いた表情の慎吾。

「女神と紅子が復活したからな。
怖いもんナシだ。」
ニヤリと笑った唇。
するりと取り出すタバコ。

「怖かったのかよ？」
薄ら笑いで見上げる瞳。
じろりと見て開くジッポ。

「あぁ…俺の相棒は目立つからな。
横浜を出たら気を集めすぎる…
女神くらいのオーラがあれば
マイナスな気を吹き飛ばせるからな。」
紫煙と共に吐き出す言葉。

「き？」
「お前に言っても分かんねーか。
まっ女神がいりゃあ無敵ってこった。」
小さく笑って見つめる後ろ姿。
さらさらと揺れる薄茶の髪。

「相変わらず意味不明だな。」
「お前に言われたくねーよ。」
久々に交わした笑顔。