「たかにーは…
あたしに忘れちゃって欲しいって思うの？
たかにーも…あたしを忘れちゃうのっ？」
胸を叩く小さな手。
感じる熱い吐息。

「ちっ違う！
好きな女のこと忘れたりしない！」
「あたしだってっ
たかにーのこと
忘れたりしないもん！」
涙でかすれた声。
思わず抱きしめた体。

「ごめんっ違う！
幸せになって欲しいけど
きっとこう思うんだ。
このまま一生、俺を忘れないで
俺だけ思ってて欲しい…って！」
「でっでも…あたしは」
「だけどっ
あやかの中にいる俺ごと愛せるような男なら
いや…俺ごと愛せる男にしか渡したくない。
そう思うと思う。」
一生懸命に言葉を繋ぐ大輝。
小さく頷いたあやか。

「涼介さんは…
あたしの中のたかにーごと愛してくれてるよ？」
「うん…そうだな。
だったら余計に話していいと思うぞ？」
「うん…」
ぎこちなく撫でる薄茶の髪。
ぽろりとこぼれ落ちた雫。

「しかし…無念だっただろうな。」
「何が？」
「１６になったあやかを残して死んじまうのがさ。」
「無念？」
「あぁ…
きっと…この手で幸せにしてやる！
って思ってただろうから…」
夜景を見つめる横顔。