「このカレーは…
あやか様の手作りなんです。」
「あやか？」
不意に聞こえた愛しい名前。
見開かれた切れ長の瞳。
俯き話す家政婦。

「今日、啓介様がお持ち帰りになって…
会えないから、せめて料理だけでも…と。」
「あやかが？」
呟いた涼介。
頷くよしえ。

「わざわざスパイスを買いに行かれたそうで…
すごく丁寧に作られてます。
私も完敗です。
やはり…愛情の差でしょうか。」
小さく笑った声。
黙ったままの白い彗星。

「残りは冷蔵庫に入れておきます。
啓介様と私も少し頂きましたが
このカレーは涼介様のために作られた物ですから。」
「俺の…ために…」
呆然と繰り返した涼介。
しっかりと頷く家政婦。

「啓介様がおっしゃっていました。
涼介様が忙しいから遊びに行くのかと思ったら
涼介様のための買い物で…
会ってる間も涼介様の心配ばかりされていたと…」
「あやかが…」
「きっと…
涼介様が好きで好きでたまらないんでしょうね。
どうか…あやか様を大切に…
守って差し上げて下さい。」
ほのかに赤く染まった頬。
優しい母のような表情。
黙ったまま頷く涼介。
とても熱くなる胸。
満足げなよしえ。