「…し？
高橋っ」
「あ…あぁ。何？」
いやに近くで聞こえた声。
ハッとする白い彗星。
隣に立つ同級生。

「明日のレポート…見せてもらえないかな？」
「えっ？明日の…
あっモバイルに…
ん？車に忘れて来たか。」
やけに軽い鞄。
入っていない愛機。

「どうした？寝不足とか？」
「あぁ…うん。」
「高橋らしくないな。
忘れ物なんてさ。」
「すぐ…取ってくる。」
「うん、頼む。
お礼にコーヒーおごるから。」
にっこり笑った男。
歩き出した涼介。



らしくない…か。


別に気にしなければいい。


分かってる。


あやかと啓介だ…


心配なんかしてない。


ただ


どうして俺に言わない？


あんな白々しい嘘をついて…


いったい何をしてるんだ？


どこに行ってる？



確かに胸に広がる不安。
無意識にする深呼吸。
つい握りしめた拳。
思わず噛んだ唇。



ワタルならともかく…


弟だぞ？


俺はどうかしてる…



あやか…


会いたい。



会えないから


不安になるのか？



俺は


こんなに小さい男だったのか？



あやか…



会いたい。