「わぁ～いっ
はやーい！」
「あやかっ
踏みすぎだ！こらっ」
「すごーい！えいっ」
「わっウソだろ！？」
「きゃははっすごーい！」
助手席の帝王。
見開かれた瞳。
スライドする景色。

「あやかっ一回戻るぞ！」
「えぇ～もぉ？」
「あぁ。
あやかがちゃんと運転できるのは分かったから！」
「はぁい。」
「うわっ」
響くスキール音。
ぐるりと回った白。

「武王に帰りま～すっ」
楽しそうな甘い声。
驚くほどの順応性。
吹き出した冷や汗。



なっ

なんなんだ！


こんなすげぇとは思わなかった！


あそびがねぇからバクダンみてぇなのに

きっちりコントロールしてる。


初めてステアリング握った日に

ドリフトにターンまでこなすなんて…


あやか…

恐ろしいぜ。


さすが

俺の女だな…


じっと見つめる横顔。
まだまだ幼い表情。
嬉しそうな女神。

「今日は走りに行く？
あたしも行きたいっ」
「そう…だな。
でも横浜だけだぞ。
この辺だったら湊の顔が利くからな。」
「みなとっち？」
「あぁ。」
「お巡りさんだっけ？」
「あぁ…本部長だ。」
なめらかな加速。
しなやかに動く手。