「で…出来た。」
ボンネットを閉めた武田。

「よし。
じゃあ慣らし行ってくる。」
意気揚々と乗り込む貴之。
しっかりと頷いた政子。

「貴之っ
気を付けろよ！」
見たこともない真剣な顔。
薄く笑って小さく頷く帝王。

「なんなんだよ。
ロータリーだぞ？
貴之が運転できねぇと思うのか？」
「ちっ違うよっ
そーゆー意味じゃなくて…」
不意に吠えた白。
見開かれた瞳。

「これ…すげぇな…」
「大丈夫か？貴之…」
「大丈夫だ。行ってくる。」
いつもの冷静な声。
ガレージに響いた爆音。
びくびくと見送る武王の社長。

「何がすげぇんだよ？
お前…ユキより手ぇかけたのか？」
「ちっ違うよ！
ユキにあんな事するわけないっ」
「あんな事だぁ？」
ぴくりと反応する政子。
ますます縮み上がる武田。

「いったい何をしたんだよっ」
「たっ貴之がやれって言ったんだよ。」
「だから何をだよっ！」
舌打ちをして掴んだ襟元。
泣き出しそうな情けない顔。

「ペダルのっあそびをなくしたんだっ」
「はぁ？」
「ユキもっあそびを減らしてるでしょ！
あやかじゃアクセル踏みきれねぇからっ」
「なんだとっそんなっ…」
言いかけて絶句した政子。