無言のまま抱きしめる体。

鼻をくすぐる甘い香り。

厚い胸に伝わる鼓動。

吸い付くような肌。


「たっくん？」

首にかかる熱い吐息。

ぎゅうっと力を込める腕。


「苦しいよ。」

かまわず口付けた薄茶の髪。

胸に広がっていく不安



なんか…怖い。


俺なんかにあやかはもったいない。


分かってる…


でも

離したくない。


あやかのそばにいたい…



「たっくんっ
苦しいってば！」

背中を叩く小さな手。

やっと緩める腕。


「あやか…」

「なぁに？」

「あやか。」

「どうしたの？」

「あやか…あやかっ」

何度も何度も呟く名前。

優しく拓海を抱きしめるあやか。



たっくん…


まただ。


不安なんだね…


あたしが

たっくんを不安にさせるの？


でも

この声…


本当に


何も考えられなくなる。


ごめんね、たっくん…



どちらからともなく繋ぐ唇。


離れてゆく心を忘れようとするかのように

何度も何度も重ねる体。



亀裂はゆっくりと


足音も立てずに近付いていた…




→次はオマケです。