「武田さん…」
『俺だって…信じらんねぇ…
貴之が…死んだなんて…
もういないなんてよ…』
涙にかすれる声。
胸に広がる絶望。

『信じたくねぇんだ…
悪い夢じゃねぇのかな。』
「武田さん…」
何も言えない自分に
怒りを覚える涼介。

『紅子も…ユキも…
なくなっちまった…』
「紅子？どうして」
『紅子は燃えちまったよ。』
涼介の言葉をさえぎる武田。
消え入りそうな小さな声。

「燃えた！？」
『誰がやったか知らねぇけど…放火らしい。
真っ黒コゲだよ…ひでぇよな…』
「紅子が…」
背中を走った悪寒。
全身が凍るような感覚。

「それで…あやかちゃんは…」
『店入ってメシ食ってたから怪我はない。
ただ…
紅子が燃えて貴之も死んで…
ぬけがらになっちまうのも無理ねぇよな…』
どこか寂しげな呟き。
ぎゅっと目を閉じた涼介。

「俺…」
『ん？』
「俺に何か出来ますか？」
『何？』
「俺っ
あやかちゃんのためならなんでもします！」
思わず口をついて出た言葉。
言った後で熱くなった顔。

『涼介…』
呆れるでも
驚くでもない
穏やかな声。

「あ…俺…」
ばくばくと暴れ出した心臓。
落ち着きなく鼻をこする指。