貴之が

死んだ。


それで

あやかちゃんは…


あやかちゃんは大丈夫なのか？



握りしめる携帯。
呼び出すメモリ。
懐かしい二文字。

意を決して押したボタン。
鳴り出した呼び出し音。

『はい、武王です。』
聞こえた懐かしい声。
ごくりと飲んだ息。

「お久しぶりです。武田さん…
高橋涼介です。」
『涼介！？
あ…久しぶりだな…』
聞いたこともないような低いトーン。
じわじわと押し寄せてくる現実味。

「あの…
史浩から聞きました…」
『あぁ…うん。』
「事故…って…」
言いかけて噛む唇。


聞いたところで何になる？

俺は…


『俺らも…まだ詳しく知らねぇんだ。
一停無視の車が突っ込んできたらしい…』
「そうですか…」
しばしの沈黙。

口を開いた涼介。

「それで…あやかちゃんは？」
『あやか？
あやかは…』
黙り込む武田。
冷たい背中。

「あやかちゃんは無事なんですよね？」
『あぁ。
ユキには貴之しか乗ってなかった。
あやかは無事だ。』
きっぱりとした返事。
大きなため息を吐く涼介。

『なんかもう…
ぬけがらみたくなっちまってるんだ…
俺らに何が出来る？』