「思い出があれば生きていけるって
気持ちは分かるけど…」
「なぁに？」
顔を上げた女神。

「俺も…
ケンタさんの意見に賛成かも…」
「なんで？」
「会って…
顔を見ても平気ならそれは平気なんだろうけど…
会ってみなきゃ分からない事もたくさんある。」
ぼそぼそと呟く拓海。

「そうなの？」
「うん。」
「たっくんも…
会って分かった事ある？」
「あるよ…たくさん。」
呟きながら弄ぶ細い指。
絡み合う２人の手。

「ふぅん。そうなんだ。」
「最初は苦しかったけど
こうやって会ってるうちに平気になった。」
「なんで？」
「何も聞けずにつらそうなあやかの彼氏でいるより
何でも相談してくれて幸せそうなあやかの
幼なじみでいる方がいいって気付いたんだ。」
優しい声と眼差し。
じっと見つめ合う２人。

「たっくん…」
「とにかく一回会ってきな。
結論はその後に出すんだ。
分かった？」
ぎゅっと握った手。
黙ったまま頷く女神。

「ありがと…たっくん。」

「あやか…
キスしていい？」

「えっ？」

突然の言葉に顔を上げたあやか。

ふんわりと重なった熱い唇。

目の前にある拓海のまつげ。


「たっくん！」